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【契約・解約】入居日の認識違いによる前払金の精算について
(ご入居者・ご家族からの質問)
母が現在入院中で、退院後にホームに入居するつもりでいました。ホームの営業担当者から催促され、退院前に入居契約を締結し、家賃の前払金を入金しました。しかし、母の病状が悪化して予定していた頃に退院できずそのまま死去したため、入居契約を解除しました。 締結した入居契約書では、入金した日が入居日となっており、実際は入居していないにもかかわらず、入金日に入居したとみなされ、前払金のうち、「入金日」から契約終了日までの家賃分を請求されました。これは、支払わなければならないのでしょう か。
≪相談者に対する苦情対応委員会のコメント≫
家族から、入金日が入居日であると認識がないまま入居契約を結んでしまったため、寄せられた苦情です。「入居した日」がいつになるのか、入居契約を結ぶ前・前払金を入金する前に、確認が必要です。
法律では、前払金の返還金の算定方法等について入居契約書に明記することとされています(老人福祉法第 29 条第 8 項)。前払金について、事業者は入居者より「入居した日」から契約の終了日 までの経過日数に対応する家賃を収受することができます。従って、以下の2つの場合が考えられます。
①前払金を支払い、実際は居室に入居していないが鍵の引渡しを受けている場合 「入居契約日」から「鍵の引渡し」を受けた日等、「実際の居室利用とみなされる日」までの家賃は支払う必要はありません。しかし、「鍵の引渡し」を受けた日等、「実際の居室利用とみなされる日」 から「契約終了日」までの家賃は支払う必要があると考えられます。
②前払金を支払い、鍵の引渡しもなく実際に居室を利用していなかった場合 実際入居していなかったので、前払金の有無にかかわらず、支払うべき家賃は全く発生しないこ とになります。従って、契約時に支払った前払金は、全額返金されます。しかし、当協会発行の有料老人ホーム標準入居契約書第 40 条 2 項では、事業者は、入居契約期間中に事業者に発生した費用の実費のみ(例:印紙税や表札作成費用等)を入居予定者に請求することができる旨の規定を置いています。
(参考)
有料老人ホーム設置運営標準指導指針
第12項 契約内容等
(1)契約締結に関する手続き等
二 前払金の内金は、前払金の20%以内とし、残金は引渡し日前の合理的な期日以降に徴収すること。
三 入居開始可能日前の契約解除の場合については、既受領金の全額を返還すること。
老人福祉法
(届出等) 第二十九条
8 有料老人ホームの設置者は、前項に規定する前払金を受領する場合においては、当該有料老人ホームに入居した日か ら厚生労働省令で定める一定の期間を経過する日までの間に、当該入居及び介護等の供与につき契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合に当該前払金の額から厚生労働省令で定める方法により算定される額を控除した額に相当する額を返還する旨の契約を締結しなければならない。
≪事業者に対する苦情対応委員会のコメント≫
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